ある晴れた日の踏迷い 2

賽銭箱に小銭を投げ入れる。
別にお参りをしたかった訳じゃない。

快晴で、それでいて暑すぎない
ギリギリな気候。
こんなチャンスはなかなかないので、
久々に知らない街に行って、迷ってみることにした。

ふらりと訪れた先の住宅地、
石段を登った先に小さな神社があって、
境内では子どもが遊んでいた。
神主がいたので挨拶して、形だけ手をあわせた。

ふと、妙な感覚に襲われる。
既視感のようだけど違う。

待って、この神社知ってる。
この神社知ってる!

まだ学生だった頃、短期のバイトで
真冬の雪が降るなかで働いたことがあった。
あまりの寒さに耐えきれず、こっそりぬけだした。

温かい飲み物を買って、
通りかかった神社に勝手に忍び込んで
寒さを凌いだ。
孤独な気分だった。
二度とここに来ることはないと思った。

まさかこんな形で再び訪れることになるとは。
その節は大変お世話になりました。
小銭で、許していただけるのでしょうか。

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