開花(入院編)

その日、会う約束をしていた人がいて、搬送されながら、約束を破ってしまう事を悔いた。
頭より腰や背中が痛かったので、車の揺れが響いた。
でも心は妙に落ち着いていて、あとの連絡をどうしようかとか、そんな事を考えていた。
救急センターは人気があり、いろんな人のうめき声が聞こえて、なんだか気が滅入った。

CTスキャンは異常なく、レントゲンの結果、8番目の背骨が潰れています、とか言う。
でも元々そういう体質の可能性もあるらしい。
翌日MRIなど精密検査することになる。
胸椎損傷疑いで、安静に動かず寝なさい、と。
言われなくても立てません。
そして、ふと救急看護師が美人に見えた。
白衣ではなく、むらさきのTシャツを着ていた気がする。
濃いむらさき。

精密検査したら、損傷はセーフ。
まったく病院て好きじゃないな。
となりのベッドのじいさんは脳梗塞で倒れたらしく、半身麻痺で歩けない模様。
面会に来たじいさんの家族もなんだか冷たいの。
でも夜にはイビキがとてもうるさいの。
ここに居てもきっと良くならない。
短期で退院させてもらった。

時を同じくして。
東京都文京区の小石川植物園で世界最大の花、【ショクダイオオコンニャク】が16年ぶりにその花を咲かせた。
しかもこの花は2日で枯れてしまうらしい。
すごく見に行きたかった。あんな場所に2万人も見物客が訪れたそうだ。

頭の傷だけは、なぜか痛くない。
打ってすぐはアドレナリン?みたいなのが出たからかな。
まだ自分で傷を見ていないので、脳が認識してないのかな。
このまま騙し通す予定。

しかし人間の治癒力ってすごい。
薬の力もあるんだろうけど、皮膚が再生していくのがはっきりわかる。
自分はまだ若いのだろう、と感じた。
じいさんは歩けるようになると良いな。

 

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