青葉の頃 2 『おそうじの夜想曲』

小学校の【おそうじのじかん】は、【おひるやすみ】の後でした。

掃除中のBGMは、ショパンの『夜想曲 第2番 変ホ長調』
誰でも知ってる馴染みな曲。

ふと懐かしくなって聴いてみると、今持っているショパンのCDは中村紘子さんの演奏で、掃除中の曲とはまったく別の演奏でした。
無性に当時流れていたものが聴きたくなりました。
朧げな記憶を頼りに、『おそうじのノクターン』演奏者を探す旅に出ます。

最初に出会ったのは、
【アルトゥール ルービンシュタイン】
巨匠だし、学校のライブラリにあってもおかしくない。
でも古いので録音状態が悪い。
興が乗ったので、もう片っ端から買ってみました。

【ウラディミール アシュケナージ】
人気があるみたい。でももうすこし遅かった気がする。

【フジコ ヘミング】
好きだけど、でもちょっとテンポが違う。

【エヴァ ボブウォツカ】
出だしから全然違う。
途中から、急にテンポが速くなる。
はやく帰りたかったのだろう。

※小学生当時の目線で好き放題言っていますが、批評ではないです。
掃除の曲と違うかどうか、だけです。
どの奏者も素晴らしい演奏です。

【タマージュ ヴァーシャーリ】
なんか違う。

【ジョセフ クーパー】
大胆に減速する。大胆な男。

【イディル ビレット】
ちょっと残響音が多い気がする。

【Ewa Poblocka】
出だしから全然違う。
って、これさっきも聴いた!
名前が読めなくて同じの2回買ってしまった。
ひっかけ問題だ。

【アルフレッド コルトー】
なんか装飾が多い。かっこいいけど。

【Sandor Falvai】
なんか鋭い音。そして眼光も鋭い。

【アレクシス ワイセンベルク】
優しい。草食系ピアノ。

【Samson François】
顔がラテン系。艶っぽい音。

【ダニエル バイレンボム】
わかんなくなってきた。

【エリザーベト レオンスカヤ】
これ、ものすごく近い。出だしの溜めがそれっぽい。
コーダ部分がちょっと長い気がする。
それと録音年代からすると違いそう。

【Abbey Simon】
これもおしいなあ。じつにおしいよ。

【クラウディオ アラウ】
ああ。
これだと思う。
タッチ、溜め、テンポ、装飾、ダイナミクス、どれをとっても記憶と符合する。

懐かしい。
音が当時の記憶をまざまざと浮かび上がらせる。

…気がする。

同じ曲でも、似たものとまるで違うものがあって、もしかしたら手本にしているのが同じ人だったり、
影響を受ける流れがあったりするのかもしれません。

6年間ほぼ毎日掃除しながら聴いて、身体と耳に刷り込まれていた感覚がありました。
小学校の粗末なスピーカーから聴いていたので、音質面から判断するのは難しかったです。
我が旧友たちは憶えているのでしょうか。

そうして、今日も夜が更けていく。

 

 

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